私はテレビの収録現場のような場所にいる。そのような場所に特に緊張もしてもらず慣れているようだった。
黒髪の女性が私に近づいてきて笑顔で話しかけてきた。
とても愛嬌のある女性で好印象であったが何か違和感を覚えた。
その女性と楽しく会話しながらその違和感について考えていたら、私はやっと気付いた。
彼女の目は鼻とおでこの真ん中に一つだけ大きくある単眼だった。
私は「単眼なんだー」と思った。
とても可愛い人だった。
そして夢から覚めた。
私は別居婚をしている。
深夜に仕事から帰宅するけど、私の家なのか分からない。家の中の家具や物は全て見覚えがない。
本棚には漫画のHUNTER×HUNTERが全巻揃っていた。表紙は実際のものと違った。
私はそれを読み始めようと一巻を手に取ったけど疲れていたので本棚に戻した。
振り返るとローテーブルがあった。テーブルの前に座り、テーブルに付いてある引き出しをあけた。そこには亡くなった人の処方箋と薬が入っていた。
すぐに引き出しを閉めて、その場に寝転んだ。
目線の先にはベランダがあって遮光カーテンは開けられてレースだけ閉じられていた。
月の光と町の電気の光が窓から入ってきて、洗濯物が風に揺れていた。
「洗濯物を取り込まないと」と思ったけど、すごく疲れていて目を閉じた。
目を閉じて夫と笑い合った出来事を思い出していた。仲は良さそうだった。
すると、ローテーブルの向こう側から何かの気配を感じた。そしてドロドロとした女の人の声が耳元で「ごめんね」と囁いて私の頭を軽く抑えて私の肩を強く抑えた。怖かった。
なんとなく前にこの家に住んでいた人か、処方箋の人なのかと思った。
体が動かなくて、口も歯茎に麻酔を打たれた時みたいにうまく動かせなかった。
それでも私は何かを喋ろうとしていて、やっと言えた言葉が「お母さん?」だった。
遠くでiPhoneのアラーム音が聞こえてきて夢だと認識した。アラーム音はだんだん大きくなって、夢でよかったと安堵した。
そして目が覚めた。
現実では私は結婚歴もないし、HUNTER×HUNTERも持っていない。
私はワンルームの部屋に住んでいる。
何故かお姉ちゃんがベッドをもう一つ置かなければならないと言っている。そんなスペースはもうない。
お姉ちゃんに置けないと伝えるとお姉ちゃんは怒りだし、ハンガーラックを捨てればいいと言い出して掛かっている服も捨て出した。
その中の一つにカーディガンがありそれは亡くなった母親のものでとても大切にしていた。
私は泣きながら「それだけは捨てちゃだめ。」と言ったけど無視された。
もう一度「それはお母さんのものだから捨てて欲しくない。」と怒鳴ったけど無視された。
そして目が覚めた。目が覚めたら涙が出ていた。
現実には姉はいないし、母親は元気にしている。
ある西洋の国に住んでいる家族がいた。家族は母親と20代の3人兄弟でみんな仲が良かった。
その国は財政難な状況らしく治安がすごく悪かった。
その家族は留学生を対象としたホームステイを提供することで暮らしていた。
今ホームステイしている留学生たちはアメリカから来ている白人の女の子と北朝鮮からアメリカに亡命した女の子の2人だった。
白人の女の子は治安の悪さも楽しんでいるようだったけど、亡命した女の子は「帰りたいー」と叫んで泣いていた。
ある日、次男の誕生日だったので家族と留学生2人で食料を買いに出かけた。
買い物から帰ると家の周りが浸水していてその水をペットボトルに入れて持ち帰ろうとしている人たちが数名いた。
土壌の状態が悪くたまに浸水するらしく、路上生活者がその水を求めてくると長男が説明した。説明し終わると家族は家の中に入って行った。亡命した女の子は怖くて家族と一緒に入ったけれど白人の女の子は水を汲んでいる人たちをずっと見ていた。すると30代の路上生活者がその女の子の顔を掴み家の壁に叩きつけて、女の子は気を失った。
それを見た別の路上生活者が30代の路上生活者を意識がなくなるまで殴り続けて立ち去った。
家の中では長男はリビングのソファでヘッドフォンを付けながら雑誌を読んでいた。次男はその隣で横になって天井を見ていた。
三男は果物ナイフをソファの前のローテーブルに置いて二階へ上がって行った。
亡命した女の子は自室で過ごしていて母親はキッチンで料理をしていた。
次男は玄関の外で殴り合いをしている様な声が聞こえたので家族が襲われると思い、椅子を玄関の横にある窓に向けて投げた。次男は壊れた窓から外を見ていた。
窓ガラスが壊れる音が聞こえた長男は侵入者だと思い、ローテーブルに置いてあった果物ナイフを壊れた窓から外を見ている男の延髄に刺した。長男はその男の背中を押しながら「反省してくれ」と言って窓から男を投げた。
窓から外を見ると顔面がぐちゃぐちゃなった男が倒れていた。その隣で倒れていた留学生が目を覚すと延髄にナイフが刺さっている男の顔を見て叫んだ。長男もその男の顔を見て絶句した。
そして目が覚めた。
私は登場していない。
私はある男性と机を挟んで向き合って座っている。男性は険しい顔をしているし私も同じ表情だったと思う。
私が海外のある国で彼と結婚するために永住権を申請していた。それの何度目かの書類を提出しなければならなくて、でも私たちには書類以外にも話し合って解決しなければならないことがあった。
彼はペラペラと今の現状と彼の思っていることみたいなことを言っていたけど私は机の一点を見つめていて聞いていなかった。
彼は深くため息をついて書類を書きはじめて封筒に封をして「出すよ?」と言った。
私は「ちょっと待って。私にも考える時間をちょうだい。自分だけゆっくり悩んで私の意見は?」と彼に言ったら彼は怒って部屋から出て行った。
私は彼のことをもう好きでもなかったし、だから解決しないといけない2人の事情なんてそもそも乗り越えようとは思っていなかった。それに早く日本に帰りたかった。
ただそれを言ってしまうと彼を傷つけてしまうと思って言えなかった。馬鹿みたいと思った。
私は両手で両目を押さえながら「疲れた」と独り言を言った。両目を押さえているのに涙が流れた。
そして目が覚めた。
これは私の過去。現実で起こった思い出を夢で再度体験してしまった。
疲れた。
私はキッチンでパンの生地をこねている。こねている途中で女の人が「そんなんじゃうまく作れないよ、ゴキブリパン。」と言って生地の上にゴキブリを乗せた。
私は後ずさりをした。
後ずさりをして足元を見ると土の上に立っていた。
正面を向くと私の両親が居た。母親は少し離れた場所に居て、父親は私の目の前で大きなシャベルで地面を掘っていた。父親が掘るたびに色んな種類の虫が出てきた。
母親は「出てくるといいね、ゴキブリ。ゴキブリごはん作らないと」と言ってお弁当箱を私に差し出した。蓋を開けると白米とその上に一匹のゴキブリがいた。
反射的にお弁当箱を落とすと父親が笑いながらシャベルで掘った土を私に向けて投げかけてきた。
息が苦しかった。
そして目が覚めた。
映画館のように座席が並んでいる真っ暗な空間に私は立っている。
私の横には白人男性が座っていて涙を流している。
男性は「今まで『愛しているの時間』の使い方を間違ってきた。」と言った。
「今まで愛している人に『愛してる』ってもっと伝えればよかった。今、最期になってそう思う。」と私を見ながら泣いた。
私は悲しくも怖くも悔しくもなく、ただ男性の頭を撫でていた。
私と男性は死ぬらしい。
そして目が覚めた。