行きたいところなんてなかった
私は真っ白な部屋の中にいる。
私の体は小学生ぐらい幼くなっていた。
目の前には若い頃の母親が扉に向かってゆっくり歩いている。
私は母親に去ってほしくなくて、何か言わないと、と思ってはいるけれど「一緒にいて」という一言が言えない。代わりの言葉も思い浮かばなくてゆっくり離れていく母親の背中を焦りながら見ている。
私は咄嗟に母親の手を握って、握った手を見つめながら「行きたいところがあるの」と言った。
母親はきっと振り返ったと思う。
そして夢から覚めた。
泣いていた。